若い時とは違う薬の効き目

歳をとると薬を飲むことが多くなります。
薬に関する正しい知識を身に付け、薬と上手に付き合う方法を見つけて下さい。
また、医師や薬剤師とコミュニケーションをよくとり、薬に関する疑問や不安を解決しましょう。

お年寄りと薬

体の変化を知り、薬と上手に付き合おう

● お年よりの特徴
お年よりは、慢性的な病気をいくつも抱えていることが多く、複数の薬を服用したり、長期間にわたって薬を服用することも少なくありません。薬とは日常的に縁が深いわけですが、それだけに、正しい知識をもって、薬と上手に付き合うことが必要になります。

● 体の機能が変化
歳をとると、体にさまざまな変化が起こります。そのため、薬を服用する場合、若いときとは違う作用やトラブルが起こることがあります。

>内臓機能の低下 歳をとるにしたがって、いろいろな内臓機能が低下しますが、例えば、薬を代謝(分解・解毒)する肝臓や排泄を行う腎臓の機能が低下すると、薬の成分が体内に長くとどまることにより、薬が効きすぎることがあります。
>薬物相互作用 複数の薬を飲むことによって、悪いのみあわせによる副作用(薬物相互作用)が起こる可能性があります。
>視力や聴力の衰え 視力の衰え、色覚(色を識別する感覚)の変化、視野の狭まり、聴力の衰えなどによって、薬を聞き間違えたり、医師や薬剤師の説明を聞き間違えたりすることもあります。
>手先の衰え、のどの筋肉の衰え 実際に薬を飲むときにも、手先の機能の衰えによって、薬を上手に袋や包装シートから取り出せなかったり、薬を飲み込む力が弱まって、カプセル剤や粉薬を上手に飲み込めないこともあります。
>のみ忘れ、のみ間違い 多種類の薬を飲んでいる場合は、特に、飲み忘れやのみ間違いなども起こりやすいことです。

このような作用やトラブルがあると、薬を飲むのを勝手にやめることがありますが、薬は意味があって処方されているわけですから、勝手に中止しないように服用をしましょう。
 自分の体調の変化に気を配り、少しでも気になることがあったら、早めに医師や薬剤師に相談してください。薬の種類、量、飲み方などを変えることによって、トラブルを解決できます。例えば、最近は、お年よりでも飲みやすいように、口の中で溶けやすい錠剤も開発されています。

● 飲みやすくする工夫
飲み方をちょっと工夫したり、補助具などを利用することによって、薬と上手に付き合うことができます。

薬の上手な飲み方
 
薬について正しい知識をもち自分で薬を管理する

● 服用している薬について
薬に関するトラブルを避けるためには、患者さん自身が薬について正しい知識をもち、自分で薬を管理する心構えが必要です。
 例えば、今飲んでいる薬について、次のことは知っておいてほしいと思います。

・ 薬の種類、名前、作用
・ のむ量とのみ方
・ 服用時の注意
・ のみ忘れたときの対処法
・ 起こる可能性のある副作用

薬を処方されたら、かならずこれらのことを、メモしておきます。薬についての情報をまとめて記録する「お薬手帳」を活用すると便利です。また、市町村が交付する「健康手帳」も利用できます。

● 薬についての疑問や不安
自分が服用している薬について、疑問や不安を抱いている患者さんは、案外多いようです。実際に、患者さんから、薬に関して寄せられる質問で多いのは、次のようなものです。
? 睡眠薬精神安定剤の副作用が心配。続けてのんでいても大丈夫でしょうか。
? 薬をたくさんもらうので、のんでいるうちに、薬の数が合わなくなる。
? 薬の飲み合わせが心配、こんなに何種類ものんで、大丈夫でしょうか。
確かにお年よりの場合には、前述したように、内臓機能の低下によって薬が効きすぎることがあり、そのために副作用が起こりやすいということはいえるでしょう。また、他の薬や食べ物との悪い組み合わせのために、効果が強くなったり弱くなったりすることもあります。しかし、副作用が怖いからといって、必要な薬を自己判断で飲まなかったり、量を減らすことは避けてください。
 特に睡眠薬については、「のまないほうがよいのでは」という先入観が強く、実際に、患者さんの判断で、薬の服用を止めてしまうケースが少なくないようです。
 しかし、睡眠薬をやめるには、「分量を少しずつ減らす、他の薬に替えながら、止める方向に持っていく」など、一定の手順が必要です。やめたい場合、また、“効き過ぎ”など、何らかの症状がある場合などは、たとえ、その症状が老化現象のように思えても、医師や薬剤師に相談し、上手に対処していただきたいと思います。
 疑問や不安は、処方した医師や薬剤師に、遠慮なく尋ねてください。これは、睡眠薬に限らず、どの薬にもいえることです。
 また、「何の薬だかわからなくなった」「飲み方がわからなくなった」などの場合は、薬剤師に遠慮なくたずねてください。特に、薬の服用と食事との関係は、注意が必要なものがありますから、わからなくなった場合は、必ず確認するようにしてください。

薬局の利用法

サービスや情報提供など、薬局を上手に利用しよう

● 「かかりつけ薬局」をもとう
特にお年よりは、複数の医療機関にかかったり、多種類の薬を飲むことが多いので、1ヶ所の「かかりつけ薬局」で、調剤してもらうようにするとよいでしょう。かかりつけ薬局で、薬の重複や悪いのみ合わせなどをチェックしてもらえば、安心です。
 かかりつけ薬局は、自宅の近くなど、通いやすく、サービスのよいところを選ぶとよいでしょう。

● 薬局のサービスを利用する
薬局では、薬をきちんと飲んでいただくために、医師に相談し、薬を飲みやすい財形にするなど、患者さん一人一人に合わせたサービスを行っています。薬局によって、行っているサービスが異なりますので、自分のかかりつけ薬局で、どんなサービスが受けられるか、たずねておくとよいでしょう。
また、薬局は、薬に関する情報ステーションです。薬について困ったことがあったら、どんなことでも、薬剤師に積極的に相談してみてください。