肝臓の機能と検査

肝臓
腹腔の右上部 上部に横隔膜、前面は肋骨に囲まれ、右のほうが大きい。左に脾臓があるため。
健康な人では、肋骨に隠れているが、肝臓に何か障害があり、腫れてくると、肋骨から下に膨れ出てくる。
日本人の成人男性 1000〜1500g
      女性 900〜1300g
“物質代謝の中心臓器”“化学工場”
<物質代謝、胆汁の生成と分泌、ビリルビン代謝
物質代謝 合成と分解
食事中の炭水化物→二糖類、単糖類→腸管→門脈→肝臓 ブドウ糖→グリコーゲン(貯蔵)
血漿蛋白(アルブミン)、α、βグロブリン、血液凝固因子 肝臓で合成
肝臓が悪くなると血液凝固能が低下して止血しにくくなる。
有害物質、薬の代謝、不活化
胆汁の生成と分泌 
肝臓(コレステロールから合成)→胆嚢で濃縮→十二指腸
胆汁 脂質を分解して腸管からの吸収を助ける。
   胆汁酸、ビリルビンコレステロールレシチンなどの脂質
ビリルビン 赤血球グロブリンから合成 
赤血球120日の寿命→脾臓で破壊→ヘム+グロビン
                ヘムから鉄を取るとビリルビン
(鉄は再利用)
ビリルビン代謝 肝臓 グルクロン酸抱合→胆汁中→腸管内 細菌によりビリベルジンに還元、ステルコビリノゲン→便中へ(便の色)
胆管がつまると便は灰白色
<検査> 
血漿蛋白合成能 アルブミン、α・βグロブリン
血液凝固検査
 フィブリノゲン(凝固第1因子)
 プロトロンビン時間(PT) 血管外の凝固因子
酵素 逸脱酵素
 GOT(AST)、GPT(ALT)、LDH 肝細胞に障害
胆管酵素 アルカリフォスファターゼ(ALP)、γ-GT 肝臓内の胆管上皮細胞に存在→胆管閉塞→血液に逆流
コリンエステラーゼ(ChE) 肝細胞で合成
 cf.サリン(有機燐剤)+ChE→失活→アセチルコリン↑→嘔吐、発汗、倦怠感、頭痛、めまい、重症(呼吸困難、昏睡、死亡)
    ChE 神経伝達系のアセチルコリンを分解
ビリルビン代謝
赤血球 ヘモグロビン→ヘム→ビリルビン+アルブミン→肝臓+グルクロ
               (間接ビリルビン) 
ン酸抱合→脾臓                
(直接ビリルビン
肝障害 肝細胞で抱合されたビリルビン→血中へ→黄疸 間接ビリルビンも増加
閉塞性黄疸 胆管がつまる 直接ビリルビンが逆流して血中へ
基準値 T-Bill 0.2〜1.1mg/dl
D-bill 0.1〜0.5mg/dl
* 2〜3mg/dl以上 皮膚が黄染

肝臓の機能とその検査
1. 物質代謝臨床試験
1) 蛋白代謝→血清蛋白
          アルブミン
         血清膠質反応
         プロトロンビン時間、フィブリノゲン
         血中アンモニア
2) 脂質代謝 血清コレステロール
3) 糖代謝
4) 色素代謝 血清ビリルビン
5) 関連酵素 逸脱酵素 : GOT(AST)、GPT(ALT)、LDH
         胆管酵素 : ALP、γ-GT、LAP
         合成酵素 : ChE、LCAT
2. 胆汁の生成 胆管酵素 : ALP、γ-GT、LAP
          血清総コレステロール
          血清ビリルビン
          排泄試験 : BSP試験、ICG試験
3. 解毒    色素排泄試験 : BSP試験、ICG試験
4. 血液凝固  プロトロンビン時間
        フィブリノゲン
5. 生体防御作用
6. 造血・血液量の調節

GPT 肝臓に特異的
GPT>GOT 肝細胞に障害
直接ビリルビンが優位 → 肝細胞性障害、閉塞性黄疸
胆管酵素 ALPの上昇 → 胆管閉塞
ChE低下 → 肝細胞障害
ChE上昇 → 脂肪肝
        脂肪代謝異常により肝細胞内に中性脂肪が蓄積
        超音波検査
        アルコールの多飲、過食(栄養価の高い食事)、肥満、ステロイドホルモンの投与、糖尿病
        GOT>GPT アルコール性脂肪肝
        GPT>GOT 過食性脂肪肝
γ-GT アルコール摂取で上昇
 50〜100IU/L 禁酒、または週に1〜2回の休肝
 100〜200IU/L以上 Dr.に相談に行く
  通常の100〜200IU/Lの上昇 2週間禁酒すると半分の活性
  アルコール性の肝炎、脂肪肝 2〜3ヶ月禁酒 正常範囲

cf.正常値→基準値
上限と下限 2.5%づつをカット 残り95%
個人の検査値を知ることが必要→数回の検査

尿中 直接ビリルビンが、血中に2〜3mg/dl以上 尿の色 黄色から褐色、泡
アルブミン界面活性作用 
 間接ビリルビンは、アルブミンと結合して、分子量が大きくなっているため、腎臓の糸球体をろ過されない。


血清GOT,GPT活性を上昇させる薬剤
1. 解熱・鎮痛剤
サリチル酸系:サリチル酸ナトリウム、アスピリンなど
・ ピラゾロン系:アンチピリン、アミノピリンなど
インドメタシン類:インドメタシン、アセメタシン
・ その他:モルヒネ、ペンタジン
2. 抗生剤
ペニシリン
セフェム系
・ テトラサイクリン系
マクロライド
アミグリコシド
・ リンコマイシン系
・ クロラムフェニコール
・ 抗真菌剤
・ サルファ剤
3. 降圧利尿剤
・ サイアザイド系利尿薬
・ ループ利尿薬(ピレタニド、フロセミドなど)
・ 炭酸脱水素酵素阻害剤(アセタゾラミドなど)
4. 脂質改善剤
・ HMG-CoA還元酵素阻害剤
・ クロフィブラート
・ コレスチラミン
5. 痛風治療薬
・ アロプリノール
・ コルヒチン
6. 糖尿病治療薬
・ トラザミド
・ トルブタミド
・ アセトヘキサミド

血清γ-GTを上昇させる主な薬剤
抗痙攣剤
 フェノバルビタール
 フェニトイン
 ジアゼパム
 カルバマゼピン
糖尿病薬
 アセトヘキサミド
 クロルプロパミド
痛風治療薬
 アロプリノール
抗真菌剤
 アムホテリシンB
 グリセオフルビン
抗生物質
 セフェム系(セフォチアム、セフォジジムなど)
 アミグリコシド系(アルベカシン)
 モノバクタム系(アズトレオナム、カルモナム)
 ホスホマイシン
 リファンピシン
血圧降下剤
 フロセミ
利胆剤
 ケノデオキシコール酸
消化性潰瘍用薬
 プロトンポンプインヒビター
 H2受容体拮抗薬(塩酸ラニチジンなど)
止しゃ薬
 ロペラミド