高血圧症

高血圧症 Hypertension

有病率 30歳以上20.0% (男23.7% 女17.1%)
好発層 50歳以上
予後 未治療では生存率は低下する

<概要>

  1. 高血圧症の定義WHO/ISH 1999

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
至適     <120         <80
正常     <130        <85
正常高値 130〜139    85〜89
grade1:軽症  140〜159       90〜99 
(亜分類:境界域高血圧)140〜149    90〜94
Grade2:中等症 160〜179   100〜109
Grade3:重症  ≧180        ≧110
収縮期高血圧   ≧140         <90
(亜分類:境界域収縮期高血圧) 140〜149 <90
収縮期圧と拡張期圧の分類が異なる場合は高いほうの血圧に分類される。

  1. 1997年米国合同委員会

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
至適範囲  <120        <80
正常血圧 120〜129   80〜84
正常高値血圧 130〜139   85〜89
高血圧 第1期(軽症)140〜159   90〜99 
第2期(中等症) 160〜179     100〜109
第3期(重症)  180〜       110〜
(1) 収縮期血圧拡張期血圧が異なった分類に属するときは、高いほうの分類を採用する。
(2) 初回測定後2回以上来院、その都度2回以上測定した平均値に基づいて分類する。
(3) 標的臓器障害、危険因子の有無を明らかにする。例:糖尿病を有する第1期高血圧
(4) 血圧が異常に低い場合はその原因を精査する。

<成因>
本邦における高血圧の90%は本態性高血圧である。発病初期では心拍数の増加が、固定期では末梢血管抵抗の増大が昇圧の要因となる。
1. 本態性高血圧(90%)
遺伝 環境(食塩感受性、肥満、職業、人口密度)
(予後を増悪する因子)年齢、人種、性、喫煙、血清コレステロールインスリン抵抗性、糖尿病、体重、血漿レニン活性
2. 二次性高血圧
(1) 腎性高血圧
(2) A.副腎性高血圧
B.末端肥大症
C.高Ca血症
D.経口避妊薬、グリチルリチンなど
(3) 大動脈狭窄、大動脈炎症候群
<主な症状>
1. 心臓に対する影響
求心性左心室肥大(壁圧の増大)
狭心症
心筋梗塞
心不全
2. 神経系に対する影響
(1) 網膜変化、暗点、ぼやけ、失明
(2) 中枢神経の機能障害(めまい、難聴、もうろう、失神、脳梗塞脳出血、高血圧性脳症)
3. 腎に対する影響
(1) 腎血管障害(輸入・輸出細動脈および糸球体血管硬化)
(2) 尿細管機能障害
(3) 糸球体障害(蛋白尿、顕微鏡的血尿)
(4) 腎不全

<治療薬>
Ca拮抗薬
血管壁には、平滑筋という筋肉の層があります。カルシウムイオンがこの筋肉の細胞に流入すると、筋肉が収縮します。そのため血管が収縮して、血圧が上がります。
 カルシウム拮抗薬は、細胞筋肉にカルシウムイオンが流入するのを抑える働きがあるので、血管が拡張し、血圧が下がります。
ACE阻害薬
血管を収縮させて血圧を上げる作用のあるホルモン「アンジオテンシン2」の生成を阻害して、血圧を下げる薬です。
心臓や腎臓によい影響を及ぼすので、特に心筋梗塞心不全、糖尿病性腎症を合併している人に向きます。
A2拮抗薬
1998年に用いられるようになった新しい降圧薬です。ACE阻害薬が、アンジオテンシン2の生成を阻害するのに対し、この薬はアンジオテンシン2が心臓や血管で作用するのを防ぐもので、より降圧効果が高いとされています。
ブロプレス
ニューロタン
β遮断薬
交感神経の信号を受け取るもうひとつの受信装置が、β受容体です。主に心臓にあるβ受容体が刺激されると、心拍数が増え、循環血液量が増加して血圧が上がります。この薬は、β受容体が働かないようにして心拍数を抑え、心拍出量を減らし、血圧を下げます。
心臓の働きが活発な人、ストレスの多い人、頻脈(脈が速い)や狭心症のある人に適した薬です。
α遮断薬
自律神経の1つである交感神経が作用すると、心臓が活発に働き、血管が収縮して血圧が上がります。
交感神経の信号を受け取る受信装置のひとつを「α1受容体」といいます。主に血管壁にあり、刺激されると、血管が収縮して血圧が上がります。α遮断薬は、このα1受容体が働かないようにして、末梢血管を拡張させて、血圧を下げる薬です。
α1受容体は、前立腺にも分布しているため、前立腺肥大症による排尿障害の改善にも効果があります。そのため、前立腺肥大症を伴う高血圧の患者さんに、よく用いられています。
α遮断薬は脂質や糖の代謝にも、よい影響を与えるため、糖尿病や高脂血症などを合併している人にも使いやすい薬です。
αβ遮断薬
α受容体とβ受容体の両方を遮断する薬です。心臓に作用するβ遮断薬では、末梢の循環血液量が減りますが、血管を拡張させるα遮断薬の作用を加えることで、この欠点を補うことができます。そのため、閉塞性動脈硬化症を合併している人でも、使えます。
ただし、服用量が多すぎると、起立性低血圧や徐脈を起こすことがあります。
利尿薬
体内にナトリウムが多いと、体液量が増えて、循環血液量も増えるため、血圧があがります。利尿薬は、腎臓に働きかけてナトリウムと水分の排泄を促し、循環血液量を減らすことで、血圧を下げます。
ナトリウムに敏感に反応して血圧が上がるタイプの人に、特に適しています。むくみ症状の改善にも寄与するため、心不全を伴う高血圧の人にも向いています。
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