気管支喘息 15 / 呼吸器疾患 5

2)テオフィリン製剤(キサンチン誘導体)

テオフィリン製剤は気管支拡張薬として用いられてきた。作用時間の長い徐放剤が開発され、喘鳴や呼吸困難などの喘息症状の出現を持続的に抑制する目的で、長期管理薬として用いられる。テオフィリンは肝臓で代謝されるが、その速さは個人差が大きく、血中テオフィリン濃度の上昇によって重篤な副作用を発現する場合もあるが、血中濃度モニタリングにより回避できる。
テオフィリンの血中濃度が高値になると消化器症状(悪心・嘔吐)や精神神経症状(頭痛、不眠、興奮、痙攣、意識障害、昏睡など)、心・血管症状(頻脈、心室頻拍、心房細動、血圧低下など)がある。
・有効域が狭い薬剤であり、血中濃度は5〜15μg/mlを目標とする。
・投与量は症例毎に異なるが、通常400mg/日を基準とする。

テオフィリン(スロービッド、テオドール、テオロング、ユニフィル

(主な作用機序)
ホスホジエステラーゼの作用を阻害して、細胞内のcyclicAMP濃度を増加させ、気管支拡張作用を示し、肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制する。その他、T細胞や好酸球の気道への浸潤を抑制、T細胞の細胞増殖反応やサイトカイン産生を抑制する。

テオフィリン製剤の注意点・テオフィリン製剤に対して過敏な患者がいるので注意する。
・喫煙、アルコール、フェノバルビタール、リファンピシンなどによりクリアランスが亢進して血中濃度が低下する。
・高齢者、低酸素血症、呼吸性アシドーシス、うっ血性心不全、肝硬変、マクロライド系抗菌薬・ニューキノロン系抗菌薬・シメチジン・プロプラノロール・シクロスポリン投与などによりクリアランスが低下して血中濃度が上昇する。

(副作用)
不眠、興奮、不安、動悸、頻脈、悪心・嘔吐、むくみ、神経過敏などがある。


呼吸器疾患 5

①診断
COPDの診断は、咳嗽、喀痰、労作性呼吸困難などの臨床症状がある場合や喫煙歴などのCOPD危険因子を有する中高年者であれば常に疑うべきである。診断の確定にはスパイロメトリーが必須である。気管支拡張薬投与後の検査で1秒率FEV1/FVC<70%であれば気流制限が存在すると判定される。他の気流制限をきたしうる疾患を除外されればCOPDの診断基準を満たす。
COPDの確定診断のためには、画像診断や呼吸機能精密検査により種々の疾患を除外することが必要である。鑑別診断でしばしば問題となるのは気管支喘息である。最大限の治療をしても非可逆的な気流制限を有する患者がおり、そのような患者ではCOPD気管支喘息が合併していると診断せざるを得ない症例も多い。